WEBでモノを売るということ

ECディレクターが考えるこれからのwebビジネスについて

こんにちは、ECディレクターの岩下創です!

突然ですが、あなたは「接客業」をした事ありますか?
僕はアルバイトでお弁当屋さんのレジ打ちとか販売員とかを経験したことがあるんですが、数ある職種の中で、接客業が最も向いていないな~と感じました(笑)
一時期老人ホームに婦人服を売りに行くという仕事をしたことがあるのですが、その時感じたのは接客とは「間の取り方」が大切で、そして自分にはこの間の取り方のセンスが絶望的に欠けていました(笑)
変なタイミングでお客さんに声をかけては断られたのですが、同じ服でも先輩の販売員さんは必要なタイミングでさっとコミュニケーションをとってご購入にまでつなげてしまう。
おまけにお客様に「ありがとう」とまで言われる…。
売る場所も、売るものも、値段もすべて同じなのに接客の仕方一つで売れ行きがこうも違うのかと、「接客」の重要性を実感したのを覚えています。

…ここまでは実店舗のお話ですが、ECでも同様に接客がお店の今後を左右する重要項目です。
なので今回はそんな接客について掘り下げていきたいと思います!!
※実店舗ではからっきし接客はダメでしたがECではしっかりやれておりますのでご安心を(笑)

ECにおける接客とは?

ところで、そもそもECはお客さんが自分自身で商品ページにアクセスするんだから、接客自体存在しないのではないか?そんな意見も聞こえてきそうです。
たしかに、実店舗のように、笑顔で挨拶をしたり、付き添って商品の案内をするという事は無いかもしれません。ただ、ページにアクセスした時、もし商品カゴと価格しかなかったら、買おうとするお客さんも半減しそうですよね?商品の事が良く分かる写真や、商品の特長、素材やサイズなどの詳細情報など、様々な情報をお客さんに提供することで、初めて購入へとつなげる事ができると思います。
ECの接客はこのようにページ上(あるいはSNSなどのメディア上)でお客さんとコミュニケーションをとり、購入の確率を上げていく作業と思っていただければと思います。

どれくらいのお客さんが買ってくれたのか?

前に集客の記事を書きましたが、いくらお客さんに来てもらっても商品を買ってもらわなければ売り上げにはなりません。
では、webに来店したお客さんのうちどれだけ成果(お店の場合は売上)につながっているのか?
それを示す一番メジャーな指標が『CVR(コンバージョン率)』です。
コンバージョン(conversion)とは英語で転換という意味なので、日本語で「転換率」と呼ばれることもあります。
「転換」というワードはあまりなじみがないと思うのですが、web業界では「最終的な成果」という意味でとらえてもらえば間違いないかと思います。「成果」ですのでサイトの目的によって必ずしも売上のこととは限りません。
例えば実店舗の紹介ページだったらコンバージョンが「来店予約」だったり学校の説明会のページの場合は「資料請求」だったりします。
※今回はECサイト向けての記事ですので、CV=購入ということでお話を進めていきたいと思います。
もちろん、絶対的な因果関係があるわけではないですが、CVRを知ることは「来店したお客さんの希望にどれだけ応えられているか」つまり広い意味での「接客力」を表している指標とも言えます。

【CVR】の調べ方

CVRはパーセンテージで表現し、例えばCVR3%の場合「100名のお客さんが来たら3件のご購入が見込める」という指標になります。
ECサイトの場合、以下のような計算式になります。
『購入件数』÷『お店への訪問数(UU)』 ×100
となります。
文字に起こすと複雑に見えますが単純な割り算です。
例えばお店に250人お客さんが来て45件の売り上げがあった場合は、
45(購入件数) ÷ 250(訪問数) × 100 = 18 ⇒ CVRは18%
ということになります。

CVRを向上させる5つのT


さて、CVRが何かが分かったことでこれを向上させるためには具体的にどのようなことをしなければならないのか?
そのポイントになるのが5つのTです。

1つ目 Timing(タイミング)
トレンドや季節に合わせた提案であるか?

2つ目 to image(想像)
商品を使用したことで得られるメリットを想像させられているか?

3つ目 target(ターゲット)
一番売りたい顧客に適切な提案ができているか?

4つ目 Trust(信頼)
お客さんに信頼していただけているか?

5つ目 得感(とくかん←無理やり!)
お得に感じる価格やサービスがあるか?

ちょっと長くなりますが一つずつ説明していきますね

1.timing(タイミング)
冒頭のエピソードにもありますが、商売において「タイミング」というのは非常に大きな要素です。
例えば元号が「令和」になった時、ECでは令和にちなんだグッズをどれだけ早くリリースできるか店舗同士がしのぎを削る様子がテレビでも放映されていましたよね。最近だと増税前には家電製品や高額商品を取り扱う店舗は前後に様々なキャンペーンを行っていました。私は令和元日特に何もしなかったのですが、コンビニで「令和プリン」という謎のでかいプリンが売っていたので、ついつい買ってしまいました(笑)もちろんこのプリンは味が特別なわけでも価格が安いわけでもありません。ただただ令和が始まったタイミングだったから買ったわけです。
でも、令和需要も増税前の駆け込み需要も、時期が過ぎれば価値はなくなります。このように商品やサービス自体は変わらなくてもタイミングによって価値は常に変動しており、これによってCVRも大きく前後します。
上記の例はそうそうないですが、バレンタインやクリスマス、お盆や入学卒業シーズンなど1年を通して様々なイベントがあります。
さらに日本には四季があり、その中にトレンドという要素もあります。
「いつでも探せる」ネットだからこそ、ユーザーは「需要」が生まれたタイミングでそれにマッチする商品にアクセスして購入していきます。
お客さんが今何を求めているかをしっかりと見極めて商品を仕入れ、イベントの企画をし、適切なコピーとビジュアルで訴求していく。
基本ですがCVRにはとても大きく影響する要素だと感じています。

2.to imagine(想像する、させる)
ネットではお客さんが商品を手に取って見てみることができないという『弱み』があります。
ですが、逆に実店舗ではできない圧倒的な『強み』があります。
それは『商品を使用している景色を見せられる』ということです。
例えばスーパーで冷凍食品が並べられていても、目的の商品でない限り素通りされてしまうことがほとんどかと思いますがECサイトではホカホカの状態の美味しそうな盛り付けイメージや、様々な用途をレシピの紹介など、購入後の使用風景をイメージさせることが可能です。
そのほか、洋服の場合ならモデルさんが実際に着用しているコーディネートをいくらでも紹介できますし、食器だったら、食卓に使用しているシーンをビジュアルに使うこともできます。
そうした意味で、ただモノを売るのではなく、その向こうにある『この商品を買うことで実現できる価値』をイメージさせることが大切です。
【例】

scope
北欧の家具や食器、雑貨を販売するセレクトショップです。
写真のように商品の使用風景の画像をふんだんに使い、購入後の生活の変化を想像させています。


ハイ食材室
チーズや生ハムなどの輸入食材を販売しているショップです。
実際に食材を盛りつけた画像やレシピなどをふんだんに載せています。
胃袋を刺激するシズル感バツグンの写真がポイントです!

3.target(ターゲット)
個人的な意見で毎回すみませんが、私は髪の毛が硬くて太いので、通常のワックスでは制御できず、いつも「ワックス ハード」で検索し、なるべく強いものを購入します。逆に髪の毛が細くてあまり固めないヘアスタイルにしたい人は一生このワードで検索をかけることはないと思います。
何が言いたいかというと、世の中にはいろいろな「タイプ」が存在し、自分が売るものを買ってくれるタイプの人に響くアプローチをすることが大事ということです。
世代や性別、体質、悩み、嗜好の違いなどにより、当然のことですが響く商品は違ってきます。
駅前のパチンコ屋がなくなりタピオカのお店ができたら、おじさんは残念がるかもしれませんが、若い女性は喜びそうですよね。
あなたが販売しているその商品も大体の場合は、その商品が一番響く「タイプ」のお客さんが存在するはずです。
年齢や性別の他にも、例えばアパレルなら「ファッションのことが分からなくて困っている」とか「カラダが大きすぎて自分に合う服が見つからない」なんていうニーズもあるかもしれません。
こうした一番自分の商品が「響く」客層に向けて、コピーやビジュアルで商品を訴求したり、そうしたユーザーが喜ぶ企画やバイイング、価格設定を行うことができれば、CVRもアップします。

4.trust (信頼)
今でこそネットで注文しても商品がちゃんと届くのか不安。。なんてことを考える事は減りましたが、
それでも、通販は実際に手に取って購入するものではないので、買ったときと手元に届いたときでのギャップも大きいです。
「思っていたよりも安っぽい作りだった」「梱包が雑で不快だった」「指定した期日に来なかった」など通販で買い物した方なら一回は小さな失敗をしているものです。
お客さんは購入を検討するときに、そうした「失敗するかもしれないリスク」というのも頭に入れて購入を検討しています。
そのため、ランキングの受賞歴や、販売実績、専門家の意見や購入者のレビューなどお客さんが安心して購入できる情報をなるべく多く集め、お知らせすることが大切です。
不良品があった時の対応についてなど、万が一の事について記載をする事はもちろんですが、ここで言う「信頼」とは「ここで購入しても失敗しない」というだけにとどまらず「この商品を購入したら必ずベネフィット(利益)がある」と思えるかどうかです。
そのために、具体的なレビューの点数や具体的な文言やマスコミへの掲載実績など、信頼してもらえる「根拠」はしっかりとアピールしていきましょう。
長期的な目線で考えると、こうした信頼に基づいた実績がとても大きな財産となります。

5.得感
当然ではありますが、お買い得であるかどうか?購入を検討する上でとても重要なポイントです。
手っ取り早くCVRをアップさせるということで考えれば「お得感」を演出しましょう。
クーポンを付けたり値下げをしたり、ポイントを付けるなど、お客さんにとってわかりやすい「お得」があればCVRは上がりやすいはずです。
ただ、他の4つは工夫によって付加価値を付けるものですが、こちらは基本的に利益を削って行うことになるため、癖にならないように気を付けなくてはいけません。
1番目の「タイミング」と合わせてここぞというときに、お得感を演出してCVRをアップさせましょう。
もちろんディスカウントだけでなく、ページ内で得感を訴求することも大切です。
「中間マージンを省いた工場直送だからできた価格!」とか「大量発注したから品質を維持しつつ低価格を実現しました!」など、説明文やコピーでもお客さんにお得感を感じてもらえるような工夫をしてみましょう。

「商品ページを完全武装」の接客はキケン!?

以上、5つのCVRを向上させるポイントについて紹介をしてきました。

最後に、この「5つのT」は必ずしも商品ページだけに盛り込むものではないという事も言っておきたいと思います。
楽天などのECモールでは、商品ページに情報を大量に入れ込み縦に長い構成で今も接客を行っている店舗が多いですが、スマホ化、アプリ化が進む中で、必ずしもお客さんが商品ページ「だけ」をじっくり見て購入を決定するのかどうかが分からなくなってきたからです。信頼しているインフルエンサーのSNSを見て購入するユーザーや、いつも見ている情報サイトで紹介されていたから見に来たユーザーもいるかもしれません。
そうした場合、一生懸命作った商品ページの情報はあまり見られない可能性もあります。
なのでSNS、情報サイト、オウンドメディア(自社メディアの事)などなど様々な視点で5のTで商品の訴求ができるように考えていきましょう!

それでは今日はこのへんで!

記事一覧

岩下 創

【株式会社BACKPACK代表 ECディレクター、ライター】 東京都出身。食品会社、自動車部品会社での勤務を経て、株式会社SEETHELIGHTに入社。メンズファッションECサイトの運営、クリ...

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。